2025年5月4日、天国の仲間たちのもとへ旅立ちました。
以下、フェイスブックで報告させていただいた内容をそのまま転記します。
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3月末頃から少しずつ飼いを残すようになり、4月に入ってからは「食べたいのに食べられない」というような様子が顕著に。
最初は歯や口の中の問題ではないかと、削ってもらったり、獣医さんに診てもらい、口内炎の治療をしてみたりしながら、食べられそうなものを探し、まだ伸びてきたばかりの青草を摘んだり、ヘイキューブの形状を変えたり、とにかく何かしら食べてくれるように奮闘。
しかし一向に改善しないので、血液検査をしてもらった結果、腎臓の機能の低下がみられるということで、補液、強肝剤等の投与を2週間ほど続けました。
その結果、少し食べるられものが増えたかな?と思える時もありましたが、日によっての差が激しく、食べた!…と思えば、次の日にはまた全く食べなかったり、安定せず……。
治療中も放牧は続けていましたが、体力も落ちていたため、動くこともほとんどなく、日に日に後肢の立ち腫れが目立つようになっていました。たぶん、リンゴ自身が「寝てしまったら起き上がれないかもしれな」という自覚があったのでしょう、2週間以上寝た形跡がありません。
「寝てしまったら、起き上がれないかもしれないね」という会話をしたのが5月3日のことでした。
その翌朝。馬房には寝てしまったリンゴの姿が。倒れた、というより、我慢できなくなり、寝てしまった……という感じでした。
馬主さん(いななき会さん)も駆けつけましたが、過去の経験上、寝てはしまったものの、2~3日は頑張るんじゃないかと思っていました。
18時頃に翌朝飼いの準備をしに行ったときにはバタバタと足を動かし、気力も体力もまだある様子だったリンゴ。
ところが、20時に夜飼いをつけに行くと、そこにはまだ温かいながらも、眠りについたリンゴがいました。
苦しんだような跡も見られなかったので、最期は静かに眠っていったと信じたいところですが、こちらが思っている以上に、内臓機能には限界がきていたのでしょう。起立困難になってから天国に旅立つまでは、歴代の馬の中でも、一番早かったかもしれません。
最終的には腎不全。これはリンゴと一緒に我が家にやってきたスモモと一緒。リンゴとスモモは「いななき会」さんが2002年に利根川の河川敷で保護した馬です。健康手帳も紛失した状態で、正確な生年も履歴も不明。中央競馬で走っていた可能性もある2頭でしたが、いななき会さんの「競走馬になったがゆえにこうした運命を辿ることになったので、全く競走馬らしくない名前に」という思いから「リンゴ」と「スモモ」という名前になりました。
とっても美人さんなのですが、気が強く、集団放牧の中ではリーダーの座でいることが多かったリンゴ。ただ、イルが来てからは、イルの後ろにつき、奥さんのような雰囲気も醸し出していました(笑)
当牧場に来てから約23年。たくさんの仲間を見送ってきたリンゴも、ついにみんなの元へ。ようやく食べたいものが食べられるようになったかな。あっちでまた、みんなのこと追い回してるかな。
辛い環境から救い出してくれた「いななき会」さんにとっても、リンゴが最期の1頭だったそうです。リンゴは「いななき会」さんに救ってもらったことで、豊かな余生を過ごすことができました。
倒れてからがあっという間すぎて、なんだか実感が湧ききっていませんが、厩舎に入り、黒く艶やかな美人さんのお顔が見えないのは、本当に寂しく、切ないものです。
リンゴ、元気でね。ありがとう。
そして「いななき会」のみなさんも、長い間、本当にありがとうございました。
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以下、生前に記載していた内容を、そのまま残しておきます
【名前】不明 【愛称】リンゴ
【生年月日】1999年と推測 【性】牝
【品種】サラブレッド 【毛色】鹿毛
【出生地】不明
【父】不明 【母】不明
■□半生紹介□■
<スモモ・リンゴ共通>
茨城県取手市・利根川の左岸河川敷で、1990年前後から地元の農家の男が元競走馬を10頭ほど飼育していたそうです。
飼育といっても、サッカー場程度の簡単な囲いの中に野ざらしで放牧されているだけで、古い腐った畳と、フスマを与えられているだけで、十分な世話がされていない状況だったとか。
正確な経緯は不明ですが、JRAの美浦トレーニングセンターが近いこともあり、中央で走っていた馬を何らかの目的で引き取っていたと推測されています。
その劣悪な飼育環境から、1998年には生き残っている馬が2頭になっており、見かねた近隣住民や動物関係の団体が援助や救助に向けての活動を行っていたようです。
飼い主の男性との折り合いがつかず、生き残りの2頭(この2頭が1998年時点の2頭と同じ馬ではない可能性あり)も劣悪な環境での生活を長い間続けていましたが、2002年、飼い主の急死により、ようやく救出に向けて動き出します。
台風の接近により河川敷が増水し危険な状態の中、かねてから2頭の援助を行ってきた馬の愛護団体・いななき会に、急死した飼い主の親類が生き残った2頭を譲渡。その翌日には利根川の河川敷を後にしました。
2002年7月15日、利根川の河川敷から直接岩手の当牧場へ。
健康手帳も紛失しており、名前も何もかもわからない2頭。
いななき会の会員さんたちが名前を考え「競走馬になったがゆえにこうした運命を辿ることになったので、全く競走馬らしくない名前に」という思いから「リンゴ」と「スモモ」という名前になりました。
<リンゴ>
養老馬・集団放牧チームのリーダーであるスモモ。年上だろうが騸馬だろうが関係なし!かわいい顔してしっかりしきります。
人間が来れば近寄ってきて鼻を寄せてくる人なつこい子ですが、やはり利根川での経験からか、スモモ同様警戒心の強い一面が。ブラッシングなどの時には特に神経質で、ブラシが触れるたびにビクビクしてしまうような時も。
そんなリンゴの特技は、ボイスパーカッション!「ぶーっぱ、ぶーっぱ」という不思議な音が馬屋に響いていたらリンゴが犯人。飼いを食べた後によくやっている気がしますが、どういう心境のときにやっているのか、真意は不明です。
リンゴのボイパ → コチラ
リンゴのボイパを生で聞けたら良いことあるかも!?